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s1074 馬鹿野郎!!

私の前を通り過ぎる時の思いつめたような横顔からして、ただごとではないな・・
取り急ぎ、島の消防団を呼ぶ必要があるな、と腰を浮かせ携帯電話を取り出すと、その子は胸元まである深さへ行くと、ピタリと止まった。
そして両手を口もとへ持っていき、腹の底から、あらん限りの声で、夕陽へ向かって叫び出したのである。
OOの馬鹿野郎!
OOなんか死んじまえ! 
OO! あんたなんか動物以下だ!
失恋した男の名前だろうか、悔しさを夕陽にぶつけている。
そうしていると気がつかなかったが、砂浜の岩陰にでも居たのだろうか、今度は左側からもう一人、女の子がズブズブと海へ入って行き、同じ態勢で叫び出したのである。
XXの馬鹿野郎!
XX! 今に見ていろ!
若い女の子が、真っ赤に沈む夕日を真ん中に、ステレオで叫ぶ様は、心打れ、物悲しい。
涙を洗い流しているのだろうか。
両手で、ざぶざぶ顔を洗った後、女の子は砂浜を上がって来た。
私の存在に気がつくと、ばつ悪そうな、気恥ずかしい顔をした。
「塩水のまま、民宿へ帰るとまずいので、そこのシャワー浴びたほうがいいぞ」と言うと、真っ直ぐシャワーの方へ行った。
シャワーの場所を聞き返さないところをみると、この島は初めてではなさそうだ。
もう一人の子も私の声が聞こえたのか、前の子の後を追ってシャワーへ行った。
自分達の、見せては恥ずかしいシーンを見られてしまった、しかし相手は、どう見ても島の人らしい。
シャワーの間に安堵感があったのか、二人はシャワー後、真っ直ぐ帰るかと思うと、私の前の腰掛け代わりの流木に腰をおろし、一緒に夕日を眺めた。
人生、いくつになっても苦楽は付き物だ。
おじさんも東京に二人の孫がいるが、二人とも、小児喘息持ちだ。
娘からのメールで、今病院で点滴をして来たとの事。
孫のゼーゼー苦しむ顔、普通の人並の子になって欲しい、と夕日に願をかけていたところだ。
若い時の辛さや苦しさは、いくらでも取り返す事が出来る。
歳をとると時間と体力に焦りを感じ、本当に肝が痛む。
胆汁を搾り切られる思いがする。
確かに今は辛いかも知れない。
しかし取り戻せるのだから・・
その辛さを肥やしとして、強い女性に変身したほうが良い、と言うと、二人は目を合わせてうなずいた。
最初の娘は、横浜出身で、続いた子が名古屋出身だという。
二人とも年齢は20代後半、ぎりぎり30前かなという感じだ。
話をしていて感じた事は、二人とも、私に限って、という自信があった。
そして、まだまだ遊びたいという気持ちが働いたようだ。
もし男が、それを察知したら、遊び心は、女より、はるかに上だから、遊び相手を探して次へと、展開していくのは当然だ。
他人ごとではない。自分の人生なんだから、何でもっと真剣に、積極的に、先へ進めなかったのだろうか。
若い時に少しでも遊びたい、という気持ちは理解出来るが、結果として、それは後々つけがまわって来る事になる。
私の知人にも晩婚で、30代後半で子供が出来た人を何人も知っている。
定年時、子供がまだ大学生、定年で時間が出来、楽しい老後をと思いきや、それどころではない。
やむなく働きに出るが給与はがっくり、今まで自分が顎で使っていた、子供みたいな若造に今度はしごかれ、心身共に疲れ果てる。
帰りに、飲み屋で気を紛らせる、ストレスで体調まで崩してしまう。
そのような人を何人も見てきた。
結果的に、結婚が若ければ若い程、早ければ早いほど、定年後は、時間がたっぷりあるので、そこで夫婦で、旅行したり、場合によっては共通の趣味を育てたりと、本当の至福の時間が出来る。
若い時に苦労すれば、年をとってから楽出来る。
若い時に、楽をして遊んでいると、今度は老後に、苦労が待ち構えている。
だけど、まだまだ大丈夫だ。めそめそしないで、新しい恋人を本気で、積極的に探したほうがいい・・
南の小さな島は誰も、周りにいない。心を打ち明けたとしても、他人に聞かれるはずがない。
二人とも、心の内をさらけ出し、明るくなった。
しかし、本当に、胸がつぶれる思いで心配をし、夜も寝ないで、心を痛めているのは、親御さんだろう。
分からないはず、と思っても感じるのが親だ。
今ごろ自殺でもしているのではないかと、心配で心配で寝られない日だろう。
元気な声を親に聞かせてあげるんだぞ、と言うと、二人とも、にっこりうなずいた。
ところで、夕べ民宿で遅くまで酒を飲んでいたが、年齢30歳前後と思われる、好青年が連泊。
恋人募集中だと言ってたから、今日にでも可能性はあるぞ。
帰って夕食がすんだら、民宿の庭で、今夜も大勢で酒を飲むだろうから、さっそくアタックしてみろ。
二人はもう元気そのもの。
がんばるぞ! がんばるぞ! と、シュプレヒコールだ。
いつの間にか夕日は、若い二人の失恋という2文字、漆黒の海の底へいざなっていった。
夕日よ、今夜もありがとう・・・・
島移住、失敗男の物語。
定年島移住した、吉田氏(仮名)が、深刻な顔で相談に来た。
移住した時、世話をしてくれた人が、いつの間にか疎遠になり、その次に親しくしていた人も、付き合ってくれなくなった。
とうとう3番目に親しくしていた人に、酒を飲んでいる時、怒鳴りつけられたという。
本土では、男同士が親しくなると、肌を触れあったり、肩をたたいたりするのは、ごく当たり前だ。
しかし島人達は、男が男に触れる事、べたべたしたり、肩をたたいたりする事は、一番嫌悪感を感じるのだ。
俺は、オカマじゃないんだ!、べたべたするんじゃない!、という、男っ気が異常に強いのだ。
吉田氏は、島の気質を知らずに、親しくすればする程、こまめに、べたべた、肩をたたいたりしたようだ。
島人にとって、肩をたたかれようものなら、とんでもない事で、往復ビンタを喰わされたような、嫌悪感を覚えるのだ。
吉田氏もそれに気付き、なんとか関係を修復したいとの事だが、一度壊れてしまった、男同士の関係は、そう簡単に修復出来ない。
その悩みの相談であった。
たぶん、男っ気の強い島の人達との関係修復は、かなり時間を要するだろう。
深く反省し、時間をかけて、解決しよう、と諭した。
島暮らしや田舎暮らし、ペットの問題や、周りとの付き合い方、その土地土地の習慣などは、注意が必要だ。
よく見ると、若い人達は、意外と、べたべたしているが、中年以上の人達は、べたべたする事を異常に嫌うのだ。
注意しよう。
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